古家付き土地のまま売る方法 メリットとデメリットと注意点

相続空き家の売却・活用

解体せず古家付き土地として売る方法は資金の先出しを抑えやすく、立地や買い手の用途によっては早期成約が期待できます。一方で建物の安全管理や状態説明の負担が残り、契約や引渡しの設計を誤ると紛争につながります。本稿では向き不向きの判断から準備物、契約条項の要点までを整理し、実務で迷わない手順を示します。

古家付き売却が向いているケース

更地にしても価格の上振れが小さいエリアや、買い手がリノベや再利用を想定する市場では古家付きが合理的です。前面道路が狭く重機が入れにくい敷地、解体時の近隣調整が難しい環境、補助金の採択待ちで時間が読みにくい場合も選択肢になります。逆に危険度が高い老朽家屋は安全面の理由から除却を先行した方が総合コストが低くなることがあります。

初動で必ず実施したい安全確保

売却活動に入る前に最低限の管理を整えます。施錠の徹底、破損ガラスの養生、落下の恐れがある外壁材や軒天の点検、雑草や越境枝の剪定、ポストの封止などを早期に実施します。室内残置物は火災や害虫の原因になるため、写真記録を残して整理を進めます。内見時は倒壊や転落の恐れがある場所へ立ち入らない動線を決め、立会い者を必ず配置します。

告知と書類整備の基本

現況有姿であっても事実関係の説明は必須です。雨漏りや白蟻、給排水の不具合、越境や擁壁の状況など既知の事項は整理しておきます。境界はできれば確定測量まで進め、難しい場合でも隣接者立会いの実測図や既存杭の確認記録を備えます。建築確認済証や検査済証、過去の増改築資料、固定資産税の課税明細などのコピーは早期に揃え、買主の審査や融資手続きに備えます。

  • 既知の不具合と修繕履歴の一覧を作成する
  • 測量図や境界確認書の有無を明確にする
  • 建築確認や検査済の書類を可能な範囲で収集する
  • 残置物の範囲と撤去責任をメモ化する
  • インスペクションの可否と費用負担の方針を決める

契約条件の設計で揉め事を避ける

古家付きは現況有姿を原則としつつ、引渡しまでの管理責任をどこまで負うかを明文化します。残置物の撤去は引渡し前に売主負担で終えるのが基本ですが、買主が活用する前提なら範囲を限定して合意します。設備の作動保証は免責とする一方、雨漏りやシロアリなど隠れた瑕疵の扱いは期間と上限額を設定するなどバランスを取ります。融資特約や解体前提の建築計画に伴う停止条件の有無も早めに整理します。

価格戦略と広告の打ち出し

更地化コストの見積を取得し、買主が解体する場合の想定純額を開示できると納得感が高まります。リノベ活用の可能性がある場合は構造や間取りの可変性、天井高や採光などのポテンシャル情報を前面に出します。写真は危険箇所を隠さず、現況と管理状態を正直に示す構成が信頼につながります。ターゲットは自宅建築希望者だけでなく、戸建て再生や賃貸運用を行う事業者にも広げると反応が安定します。

よくあるトラブルと予防策

境界未確定のまま契約し、引渡し直前に越境やブロックの共有が発覚する事例が見られます。測量や復旧の責任分担を契約前に決め、工程と費用の上限を文字にします。残置物の量が想定より多く撤去費が膨らむ問題は、範囲の写真添付と数量の目安記載で抑制できます。インスペクション結果で重大欠陥が出た場合の価格調整や解除要件も条項化すると交渉がスムーズです。

出口までのスケジュール管理

売出前に資料収集と安全確保を終え、媒介契約から一か月程度で反応を評価します。申込後は融資審査とインスペクション、境界の最終確認、残置撤去の順にタスクを積み上げます。固定資産税の判定日や相続関連の期限が絡む場合は決済日を逆算し、遅延が生じたときの代替日程まで決めておくと安心です。全工程で写真と書面の証跡を残し、説明の一貫性を保てば、古家付き売却は安全に着地させることができます。

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